転職・異動先での職場コミュニケーション|活躍する人とつまずく人の違い
こんにちは、株式会社ROOKIEの堀内です。
異動や転職をしたばかりの方、あるいはこれからする方に向けて、最初の数ヶ月で何をすべきかという話をします。
新しい環境での職場コミュニケーションの築き方が、その後の活躍を大きく左右します。
この記事の目次
中途入社者の9割が、入社後にギャップを感じている
まず、様々な調査で、多くの中途入社者が課題を抱えていることが示されています。
エン・ジャパンが実施した入社後ギャップ調査では、87%が「入社後にギャップを感じた経験がある」と回答。
さらに、そのうち約7割が「ギャップが理由で転職を考えた経験がある」と答えています。
最も多かったギャップは職場の雰囲気と仕事内容でした。
また、パーソルの調査によると、「中途採用者の約6割が職場で孤独を感じている」とのことです。
(出所:【パーソルキャリア】転職者調査 2020年)

新しい環境にうまく溶け込めないという問題は、多くの中途入社者が共通して経験している現象です。
なぜ、ギャップが生じてしまうのか
これは、個人だけの問題でも、組織だけの問題でもありません。個人のマインドセットと組織の放置が重なった時に起きる問題です。
個人側の課題
立教大学の中原淳教授は、中途入社者が陥りがちな罠について、こう指摘しています。
「中途入社者は『即戦力』というプレッシャーを受けているため、組織への影響力を発揮することを焦ってしまう。しかし、まず職場に適応するステップが抜けると、結局は明後日の方向への努力になってしまう」
「すぐ成果を出さなければならない」という焦りが、職場適応・関係構築という最も重要なステップをスキップさせるのです。
組織側の課題
一方で、受け入れる組織側にも課題があります。
リクルートマネジメントソリューションズは、中途入社者の組織適応に関する研究の中で、こう指摘しています。
「中途入社者は『即戦力』なので、支援やフォローは必要ない、という誤った考えをもつ上司や職場が多い。中途入社者にどう関わり、何を支援すべきかを、受け入れ側が十分に理解できていない」
本人も組織も、「即戦力なのだから、一人でやれるはず」という暗黙の前提を持ってしまう。すると、関係構築のための時間も場も生まれません。
そして、これを放置すれば、本人にも組織にも大きな損失になります。
東京大学の研究では、仕事における孤独感が「ほとんどなかった」人と比べ、「ほとんどいつもあった」人では、6カ月後の離職リスクが2.46倍高いことが示されています。
では、この状況をどのように変えていくべきなのでしょうか。
評価の土台は、最初の6ヶ月で決まる
リーダー層に限った研究ではありますが、IMDビジネススクール教授のマイケル・ワトキンスは、著書『The First 90 Days』の中で、新任者の組織への貢献がコストを上回る「ブレークイーブンポイント」に達するまで、平均6.2カ月かかると述べています。
言い換えると、着任から半年は、新任者が組織から消費するコストの方が大きい期間です。
では、この時期に個人はどう動くべきなのでしょうか?
ワトキンスはこの期間に新任者が陥りがちな失敗パターンを「移行期の落とし穴」として整理しています。
「自分の知識にこだわる」「最初から答えを持っている」「多くをやろうとしすぎる」など、本人は良かれと思ってやっていることが、実は逆効果になる、という指摘です。
その中の一つに、今回の話と直結する落とし穴があります。それが「横方向の人間関係を軽視する」です。ワトキンスはこう指摘しています。
「新任者は上司や直属の部下といった縦方向の関係に時間を使いすぎ、同僚やその他のステークホルダーとの関係を疎かにしてしまう。その結果、成功に必要なものを十分に理解できず、支援してくれる味方を築く早期の機会を逃してしまう」
転職後・異動後に職場コミュニケーションを築くためにすぐやること

①組織のキーマンを把握する
新しい部署や会社に入った直後は、組織図や役職だけを見ても、実際の仕事の進め方はわかりません。
どの部署に相談すれば話が早いのか。誰に事前に根回ししておくべきなのか。会議で発言力を持っているのは誰なのか。困った時に周囲から頼られているのは誰なのか。
こうした「実際に仕事を動かしている人」が、どの組織にもいます。ここでいうキーマンとは、必ずしも役職が高い人のことではありません。
現場の事情に詳しい人、他部署との調整がうまい人、周囲から信頼されている人、情報が自然と集まってくる人です。
異動・転職直後には、まずこのキーマンを早めに把握することです。
②「教えてください」スタンスで入る
前提として、新しい環境では前の会社や部署での経験をいったん脇に置くことです。
もちろん、これまでの経験が無価値になるわけではありません。ただ、その経験がそのまま通用するとは限りません。仕事の進め方、意思決定の癖、暗黙のルール、人間関係。そうしたものは、組織ごとにまったく違います。
加えて、受け入れた側は、あなたがどれだけの経験やスキルを持っているか全く分かりません。そういう状況でいきなり自分のやり方を押し付けると、当然反発を食らいます。ですので、まずはその場のやり方に合わせながら、少しずつ実力を見せていけば良いのです。
ある異動者の挨拶
私がトヨタの営業企画部にいた頃、生産本部から一人の課長が異動してきました。
その人は、かつて営業系部署に15年近くいて、その後生産本部で5年ほど過ごし、また営業系部署に戻ってきた方でした。
その方の最初の挨拶が、今でも忘れられません。
私は営業部門で長い経験を積み、生産本部で視野を広げてきました。営業業務について皆さんから教わることは何もありませんが、営業と生産業務の両方について皆さんに教えられることは沢山あります。いつでも質問してきてください。
おそらく、その人に悪気はなかったのでしょう。
ただ、数年で営業系部署も大きく変わっていました。仕事のやり方が変わり、組織改編によってメンバーも変わり、その課長を知らないメンバーも多数いました。
そんな状況で、「皆さんから教わることは何もない」という言葉は、一瞬で場の空気を凍らせました。
その後の仕事について詳細は省きますが、周囲との連携が上手く行かず、十分な成果を残せないまま他部署へ異動していきました。
どんな組織にも、表に出てこない文化や暗黙のルール、そしてあうんの呼吸が存在します。
かつては通用していたやり方も、新しい環境では一度リセットする必要があります。そして新たな環境での協力関係をいち早く築くべきなのです。
自分は一人でも仕事が出来るというプライドが最初の一歩を誤らせるのです。
また、わからないことをわからないまま放置する。あるいは、知ったかぶりをすることも厳禁です。
実は、これは仕事ができる人ほど陥りがちです。
もう中堅社員だから聞くのが恥ずかしい、などというくだらないプライドは捨てましょう。
着任直後にわからないことを聞くのは自然です。むしろ、時間が経ってからの方が今さら聞きづらいという空気になります。
ここで特に意識してほしいのが「年下の先輩」(年下だがその部署の先輩)への接し方です。
多くの部署には、実務経験豊富な30歳前後の社員がおり、その人は周囲からも信頼されています。そうした年下の先輩に積極的に質問して仲良くなることで、情報も得られますし、関係も自然に広がります。
③自部署の中で、日常的な接点を増やす
新しい環境に飛び込んだ時に大事なのは、「話しかけられやすい人」になることです。
ランチや飲み会に誘われたら、最初のうちはできるだけ(というか絶対に)顔を出すべきです。業務時間中の会話だけでは、その人がどういう人なのかは中々分かりません。
部署やグループの飲み会などでは、自分から幹事を買って出るか、幹事を手伝うくらいの姿勢で臨みましょう。
最初にそれをやれば、後輩から「いやいや、ぼくたちがやります」と自然になるはずです。その時点で、あなたはすでにその組織に馴染み始めています。
④関係部署にも早めに顔を出す
自部署に馴染むことと同じくらい大事なのが、仕事で関わる関係部署との接点です。
異動・転職直後は、自分の部署の中だけで精一杯になりがちです。ただ、仕事は自部署だけでは完結しません。隣の部署や前後工程の部署には、できるだけ早めに挨拶に行きましょう。
ここはスピードが命です。
着任直後に、「今回異動してきました。これからお世話になります」と言うだけです。
しかし、時間が経つほど挨拶のタイミングを失います。「隣の部署に新しく来たあの人、まだ挨拶に来ていないね」という話が出た時点で、すでに印象は悪くなっています。
私は新入社員の頃、仕事で関わる生産本部の担当者のところへ伺う際、必ず缶コーヒーを買っていきました。
特に初回は加糖・微糖・無糖の3本を持参し、好きなものを選んでもらいました。そして、微糖が好みだと分かると、2回目からは微糖を1本だけ買っていく。たった150円です。

それだけで確実に顔と名前を覚えてもらい、仕事の相談や無理なお願いができる土台が出来ました。
もちろん、これは皆さん缶コーヒーを持っていきましょう、という話ではありません。
大事なのは、相手に人として関心を持っていることが伝わる小さな行動です。
個人にも組織にも大事なのは「横・斜めの関係」
関係構築というと、上司や部下との関係(縦の関係)に目が向きがちです。
確かに、仕事上最も関わる頻度が高いのは、同じPJに取り組む上司と部下でしょう。
しかし、どんなPJも縦のメンバーだけで完結することはありません。
情報・データ・知見提供はもちろん有識者の紹介など、周囲のメンバーの協力が無ければPJは進みません。
ワトキンスの「横方向の人間関係を軽視するな」はこういうことです。
また、日立製作所フェローの矢野和男さんも著書「トリニティ組織」の中で、
- 良い人間関係はその人に幸せを高める
- V字(本記事でいう縦)の関係ではなく、三角形の関係(横の繋がりを増やす)が多い組織ほど生産性が高い
- V字か三角形かの違いは、「用事(仕事)だけのつながり」か「仲間関係かの違い」
と主張されています。
つまり、仕事で直接的に関わる上司・部下だけでなく、周囲との関係を構築することが、個人にとっても組織にとっても重要だということです。
個人と組織、双方の歩み寄りが必要
本記事では、関係構築に向けて、個人が何をすべきかを書いてきました。
しかし、これは中途入社者や異動者だけが努力すればすべてが解決する問題ではありません。
受け入れ側の組織にも、新しく入ってきた人が早く馴染めるよう、関係を作るための場や時間を意図的に設計することが求められます。
個人の歩み寄りと、組織側の場づくり。
両方が揃って初めて、中途入社者や異動者が本来の力を発揮し、組織のパフォーマンスが向上します。
新しい環境へ移ってまだ間もない方は、いきなりランチは難しくても、まず周囲の仲間と雑談してみてください。
そして、人を受け入れる立場の方は、そのような雑談しやすい場が自社にあるかどうか、一度問い直してみてください。
組織側の具体的な動き方としては、入社・異動後の最初の1ヶ月に横・斜めの関係が生まれやすい少人数での場を意図的に設ける、部門横断の交流機会を定期的に仕組み化する、といったことが効果的です。「慣れるまで待つ」では、前半で述べた6ヶ月を個人の努力だけで乗り越えさせることになってしまいます。
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