商品企画とは|商品企画の概念・商品企画の流れ(第1回)

商品企画を自社の都合だけで進めていませんか。
そもそも、商品化したものを利用する人は誰なのでしょうか。
商品企画は、何となく始めてしまうと方向性も定まらずに進まない状態が考えられます。
企業の商品企画者は、「商品企画とは何か」という概念の理解が必要です。
商品企画の概念や進める際の流れを知り、成果に期待できる商品化を目指しましょう。
本記事は、「商品企画とは何か」について解説する連載コラムです。
第1回は、商品企画の概念・商品企画の流れについて解説します。
製造業の商品企画担当の方は、ぜひ役立ててください。
商品企画とは
商品企画とは、市場の動向や顧客が求めているものを調査し、その調査データをもとに新商品や既存商品の改良などの企画を立てることです。
商品企画の「企画」を意味するものは、「実現すべきモノゴトの内容を考えて、その内容を実現するための計画を立てること」ともいわれています。
※出典:日本商品開発士会(JMCP)「商品開発と商品企画の違い 商品企画ステップ10」
商品企画の概念
商品企画とは、「製品の表面的な機能だけでなく、その背後にある「顧客への価値提供」を定義し、
構造化・可視化すること」を指します。
顧客への価値提供とは、顧客がその商品を使って価格同等または価格以上の価値を受けるかどうかです。例えば、地方の山間部に住む人と都会に住む人にミネラルウォーターを販売するとしましょう。
地方の山間部に住む人は、天然の冷たい湧き水を飲める環境に住んでいます。
そのような人にペットボトル入りの水を販売してもおそらく購入しないでしょう。
一方、都会に住む人は、水道水をそのまま飲料水として飲めない環境にいます。
そのため、ペットボトル入りの水を購入する可能性があります。
商品企画は、顧客の価値に適したものを定義し、さらに構造化・可視化することです。
商品企画を実行するうえで重要な考え方には、ドラッカーの言葉が当てはまります。
「顧客が購入するのは“製品”ではなく、“価値の実現手段”である」
このドラッカーの言葉が商品企画を進めるうえでもっとも重要なヒントになるでしょう。
ドリルの話

マーケティングを学んだ経験のある方は、聞いたことがあるかもしれません。
“ドリルを売るのではない、穴を売れ” という言葉です。
参照:『マーケティング発想法』/セオドア・レビット博士著,1968年発刊・ダイヤモンド社
商品企画者は、「顧客の不満の解消」や「より良い体験の提供」に主眼を置かねばなりません。
ドリルの話は、それをイメージさせる例えになるでしょう。
いまドリル売り場でドリルを探している人は、本当にドリルが必要なのでしょうか。
もし、ネジを通す穴の開いた板さえ手に入れば、ドリルを購入する必要がないかもしれません。
いまドリルを手に取って検討している人は、穴の開いた板の購入で目的を達成する可能性があります。つまり、「穴の開いた板」は、DIYで棚を作ろうと考えている顧客に向けたベネフィットの提供につながります。
ベネフィットとは、顧客が商品やサービスから得る効果や利益のことです。ドリルの話では、棚を自作することが目的の顧客に対して、「穴をあける道具」ではなく「穴の開いた板」を売ることで、目的達成への近道を提供しました。その結果、顧客にベネフィットを提供したことになります。ドリルの話から見えてくるポイントは、2つです。
ポイント① 顧客が本当に求めているものを深く理解する
- 商品企画者は、顧客の言葉の裏にある潜在的なニーズや真の目的を見抜く
ポイント② 顧客の不満を解消し、より良い体験を提供するための解決策を提示する
- 商品企画者は、既存の枠にとらわれず、顧客の課題を最も効率的かつ快適に解決できるような、新しいアプローチやサービスを模索する
商品企画者としての心構え

商品企画者は、”価値の実現手段”の設計者として、強い意志を持って取り組まねばなりません。
ROOKIEでは、下記の5つを「商品企画者の心構え」として掲げています。
マインド
1.出来ることを実現するだけなら企画は不要。企画屋は「変化」を求めよ
商品企画者は、出来ることを企画するのではありません。
商品企画は、「できない」を突破することが魅力ある商品にする重要なポイントの1つです。
市場分析
2.「天・地・人」の三要素でもっとも大切なのは「天の時」
「天・地・人」とは、「天の時・地の利・人の和」のことです。商品企画の観点では、市場分析において、「天の時」が最も重要だと考えています。その理由は、変化への対応が求められる時代において、市場のタイミングを知ることは”絶好のチャンス”だからです。
絶好のチャンスは、いつまでも続きません。先行者利益という言葉があるほど重要な考え方です。「迷ったらとりあえず行動する」という考え方が市場調査には求められるでしょう。
ターゲット顧客
3.お客様のイメージを「鮮明」に。お客様ニーズの集約・商品化が企画
商品企画で定めるターゲット顧客は、鮮明にする必要があります。ターゲット顧客が鮮明でなければ、相手のいない市場で製品を売ることになるでしょう。つまり売れない商品を企画している状況です。
ターゲット顧客が鮮明であれば、お客様のニーズの集約による商品化ができます。
商品企画者は、真に「お客様」になり切って考え抜きましょう。
仕様企画
4.想い・コンセプトは、製品(モノ)を通してしか伝えられない
仕様企画においては、製品に対しての想いやコンセプトを製品とは別に伝えようとしないことが重要です。例えば、自社ビジネス(製品)の想い・コンセプトを、文章で伝えたとしても製品の仕様とかけ離れていたら顧客には伝わりません。
想い・コンセプトは、製品の仕様に込める必要があります。仕様を企画する段階で、「製品を使った人がどう受け止めるか」という購入後の利用感まで考えた企画が求められるでしょう。
販価企画
5.お買い得だけに頼った企画は恥ずべし
商品企画を実施するうえで、企画の段階で「お買い得」という”安さ”だけに訴求する行為は商品企画者として恥ずべき行為です。
販価企画は、安さ勝負をするのではなく、「必死の原価低減」と「商品への魅力付与」「その価値に”妥当な”値付け」が重要です。
商品企画の流れ

それでは、商品企画の流れについて解説します。「商品企画」と一言であらわしても、その領域は多岐にわたります。 その領域を流れに沿って並べると次の通りです。
- 前提整理
- 商品コンセプト立案
- 商品詳細企画
- 販売企画
商品企画は、前提整理(市場・顧客、自社・競合の分析)から始まります。次に、明確なターゲット顧客を設定し、そのニーズや価値観に基づいて商品コンセプトを立案します。
商品コンセプトの段階では、「Why(何でやるのか)」「Who(誰のためにやるのか)」を明確にします。
そのうえで、「How(どのようにしてやるのか)」をデザイン、仕様、価格等で具体的に落とし込んでいきます。 このように、プロセス全体を通じて、多くの関係者と合意形成を図りながら進行することが商品企画の流れになるでしょう。
商品企画の流れについては、第2回でくわしく解説します。
まとめ:商品企画を進めるうえで重要なポイントを理解しよう
商品企画は、「製品の表面的な機能だけでなく、その背後にある「顧客への価値提供」を定義し、構造化・可視化すること」と定義しました。製造業の担当者が商品企画を進めるにあたって、製品の表面的な機能や自社の製造技術ばかりを訴求してしまいがちです。
顧客は、製造元の技術よりも製品から伝わってくる価値に注目しています。ドリルの話を例に紹介した2つのポイントが重要です。
商品企画は、2つのポイント「顧客の不満の解消」と「より良い体験の提供」を念頭に取り組むことをおすすめします。